先日のこと、非常勤講師を務める専門学校で、林業なのか製材なのかはっきり確認していませんが材木を供給する仕事をしたいという学生の声が聞こえました。
「君、なかなか鋭いな!」思わず私は声をかけてしまいました。 設計や施工管理をやってみたいという学生は多いのですが、素材業者に目を向けるとは、なかなかのセンスです。
浜松市の66%は、実は森林です
現在の浜松市の森林面積は約10万3千haで、市域の66%を占めています。 66%のうちの大部分を占める旧天竜市が浜松市に吸収合併されるずっと前、私が中学生だった頃は、「杉の里ロードレース」というマラソン大会があったほどで、天竜=杉・桧のイメージは、昔から当たり前に私の中にありました。 2月頃に行われるその大会に、中学校の部活の一環で参加しましたが、翌日から目が痒くて痒くて、今思えば花粉症の始まりでしたね。
森林は天竜川流域上流部に広がり、そのうち約70%以上がスギ、ヒノキの人工林です。この人工林は「天竜美林」と呼ばれる日本三大人工美林の一つに数えられ、美しい景観とともに、良質な木材の産地として全国に名を馳せています。 ここで必ず名前が出るのが地域の偉人、金原明善です。 静岡県の小学生であれば社会の授業で、山葉寅楠と並んで必ず聞く名前かと。
製材の山を見て、素材にうっとり
本職の材木屋さんほどではないですが、私もあちこちの産地の材木を見ていて、実体験から天竜材が良質であることは実感しています。 一般に九州・四国など暖かい地域の材木は、スクスクと育ち、木目の間隔が広いと言われています。 天竜材は他の産地の木材と比べ粘りがあり、強度が高く加工がしやすいことから、木造住宅の構造材として多く使われています。
新築物件の際には、材木屋と懇意にしている製材工場まで趣味と実益を兼ねて現物確認に行きます。 そこまで足を運ぶ建築士も珍しいようで、実はこんな材料があってね、ゴニョゴニョと、良い木目の「当たり」を出してくれることも。
年輪の目が細かく美しく、油分が多いため、カンナをかけた後の光沢感あるツヤは天竜材の特長の一つでおすすめポイント。
地の利を活かして、天竜杉を使った木の家に住む
北海道に行ったら海鮮丼食べたい、とか、浜松ならうなぎでしょ、など地域イメージと結びつく食べ物は多い。 食と同じように浜松市民もぜひ地元の天竜杉推しで。いかがでしょう?
正直なところ、すべて木材で仕上げると若干暗めの山小屋になりがち。100%でなくて良いんです。例えば白い漆喰を組み合わせて、自然の明るさも活かしつつ、ちょうどいい塩梅の天竜杉を使った木の家をぜひどうぞ。