我が家の食卓には、ちょっとした相棒のように存在する小型テレビがある。家族が集まるキッチンや食卓で、さっとニュースをチェックするにはこれ以上ないほど便利だ。もちろん、映画鑑賞などには物足りないが、新聞を読みながら、あるいはコーヒーを片手に気軽に録り貯めた番組を1.3倍速で再生する際には、このテレビが欠かせない。我が家では、小さいながらも主役級の家電だ。
その正体は、パナソニックのプライベート・ビエラUN-19F5というモデルで、チューナー(品番:UN-E5S)とモニターが独立しているのが特徴だ。我が家ではダイニング周りにTV配線を用意していなかったため、リビングのテレビ台に収めたチューナーさえあれば、無線で接続できるのがありがたい。さらに、チューナー部にHDDを接続すれば録画も可能で、朝ドラ「虎に翼」や大河ドラマ「光る君へ」などのお気に入りの番組を撮り貯めて楽しんでいる。
しかし、盆休みのある日、突然そのテレビが壊れてしまった(泣)。AMAZONアレクサを通じて声で操作していたのだが、急に私の指示に全く反応しなくなったのだ。調べてみると、チューナー部の電源LEDが点灯しない。問題がありそうなのは、お弁当箱ほどの小さな箱だ。
メルカリでチューナー部だけを探してみたものの、7、8年前の古いテレビにもかかわらず、5000円以上の値がついている。後継機を新品で購入しても4万少々だし、治るかどうかわからない中古品にこの金額をかけるのは、どうにも釈然としない。直感的に割に合わないと感じた。
私は、元・工作少年だった。図画工作と技術家庭科が得意で、何歳になってもそのスピリットは失われていない。だからドライバーを手に取り、迷うことなく分解を始めた。 建築士が本職で、テレビの故障原因なんて分かるわけがない。分かりたいわけでもない。ただネジを外してみたかっただけ。ただ、工作少年時代とは違い、大人になった僕は、後で戻せるように写真を撮りながら作業することを忘れなかった。
蓋を開けて中を見渡していると、液漏れしている電解コンデンサを発見。「まさかこれが原因?」と、16V1800μFのコンデンサに目をやる。中学校の技術家庭の授業で教わった、極性に注意することが頭をよぎる。 教えてくれた池端先生元気かな。 Amazonで検索してみると、なんと数百円で購入できる部品だった。これで直るのなら、ブログのネタにもなるし安いものだ。早速注文し、届くのを待った。
数日後、待ちに待った部品が到着。この数日間、リビングのテレビまで足を運んで番組をチェックするたびに、普段の便利さがどれだけ大事だったかを実感した。失って初めて気づく、というのはこういうことだろう。
はんだゴテの作業は昔から好きだったので、準備は万端。古いコンデンサを手早く外し、注意深く新しい部品に交換した。コネクタを元通りに接続し、蓋を閉めてネジを締め直す。まるで中学時代に戻ったかのような感覚だ。
少しだけ緊張しながらスイッチを入れると、見事にLEDが点灯した。火を吹かなくて良かった。アンテナ線をつなぎ、画面を確認すると、映像が映り始めた。数百円の電子部品で、我が家の日常が戻ってきたのだ。
長男と次男が帰省してきて交通費がボンボン飛んだ今、思わぬ出費が避けられたことに心から安堵。そう、中学時代に技術家庭の夏休みの宿題があったなら、今回の修理体験で立派なレポートが一本書けたに違いない。そんなふうに考えながら、我が家の8月は静かに終わろうとしている。
コメントをお書きください